農園のこだわり

朝、ハウスの戸を開けたら、まず中の空気を感じます。夜の冷えが残っているか、もう日差しが強いか。葉をめくり、土に触り、昨日見た実がどれくらい伸びたかを確かめます。

河田農園は、群馬県高崎市のきゅうり農家です。私たちが作りたいのは、かじったときに「みずみずしい」と分かるきゅうり。そのために何か特別なことを一度するのではなく、毎日畑を見て、その日の手入れを決めています。

葉の間で育つ河田農園のきゅうり
葉の間で育つきゅうり。一本の実だけでなく、株全体の変化を見ながら手を入れます。

昨日と同じでは、うまくいかない

「農園のこだわりは何ですか」と聞かれると、ひとことで答えるのは難しいです。木炭を使った土づくりも、ハウスの管理も大切です。でも、それだけで毎年同じように育つわけではありません。

晴れた日は土の乾きが早く、曇りが続けば葉の様子が変わります。昨日と同じ量の水をやればよい、とは限りません。決めた方法を守ることより、目の前の株を見てやり方を変えること。結局は、それを毎日続けています。

実を見る前に、株を見る

店頭では一本のきゅうりですが、畑では根、茎、葉、花がつながっています。実の張りが足りないとき、原因が実そのものにあるとは限りません。根がいる土はどうか、葉の色はどうか。少し離れて株全体を見ます。

農林水産省も、土づくりでは土の物理性、化学性、生物性を見ながら、堆肥や土壌改良資材などを適正に使うことが大切だとしています。何かを入れて終わりではなく、その後どう育ったかまで見る。それが私たちの考える土づくりです。

木炭を使った土づくり

河田農園では、畑に木炭を入れる土づくりを長く続けてきました。木炭は、農林水産省がいうバイオ炭の一つで、土壌への炭素貯留や透水性の改善が認められる土壌改良資材として紹介されています。

ただ、木炭を入れれば必ずおいしくなる、という話ではありません。種類や量、もともとの土の状態によって働き方は変わります。入れすぎれば土壌のpHが上がり、生育に影響する可能性もあります。

長く使っているからこそ、万能だとは考えていません。土の水分や根の様子を見ながら、必要な量と使い方を考える。木炭は、私たちが土と付き合うための道具の一つです。

ハウスの中も、毎日変わる

ハウスに入れれば天候の影響がなくなるわけではありません。晴れればあっという間に暑くなり、雨が続けば湿気が残ります。外の気温、日差し、風、土の水分。その組み合わせは毎日違います。

農林水産省の施設園芸資料にも、温度や土壌水分だけでなく、日射量、湿度、二酸化炭素濃度などが生育に関わるとあります。計器の数字は見ます。でも最後は、葉を見て、実を触って、昨日までの様子と比べます。どちらか片方だけでは判断できません。

収穫した河田農園のきゅうりの表面
収穫したての張りとみずみずしさ。色や表面の状態も一本ずつ確かめます。

収穫は、きゅうり待ち

夕方にはまだ細かった実が、翌朝には採れる大きさになっている。収穫期には珍しくありません。昨日歩いた場所でも、葉の裏までまた見ます。

早ければまだ細く、待ちすぎると食感や種の状態が変わります。色、張り、重みを見ながら一本ずつ採るので、人の予定よりきゅうりの育ち方が優先です。忙しい時期ですが、鮮度はここで決まります。

パリッとした一口を届けたい

河田農園が目指すのは、包丁を入れたときに水分がにじみ、かじったときに気持ちよく割れるきゅうりです。みずみずしさや歯切れは、品種だけで決まるものではありません。土の状態、栽培中の環境、収穫のタイミング、収穫後の扱いが重なって、食卓での一口になります。

最初の一本は、味噌や塩を少し添えて、そのまま食べてみてください。次はサラダや浅漬け、酢の物に。加熱すると青い香りがやわらぎ、肉や卵ともよくなじみます。栄養成分や食べ方はきゅうりの効能、日々の料理はきゅうりのレシピで紹介しています。

曲がったきゅうりもできます

きゅうりは、いつも同じ形にはなりません。育つ途中で葉や支柱に触れたり、光の方向へ伸びたりして曲がることがあります。太さも長さも、一本ずつ違います。

箱に詰めるには形がそろっている方が扱いやすい。でも、少し曲がっていることと、おいしく食べられることは別です。形だけでなく、張りがあるか、傷んでいないかを見て選びます。

袋詰めした河田農園のきゅうりとトマト
収穫した野菜を袋に詰め、河田農園の名前とともに食卓へ送り出します。

群馬県高崎市で育てる意味

群馬県は、きゅうりづくりが盛んな地域です。群馬県の公表資料によると、令和6年産のきゅうり出荷量は全国第2位。県内ではハウスを利用し、春から初夏に出荷する促成栽培と、秋に出荷する抑制栽培を組み合わせた生産が行われています。

長く続く産地には、その土地の季節に合わせた知恵があります。けれど、昔からの方法をそのまま繰り返すだけではありません。気候の変化や資材、栽培技術の進歩を受け止めながら、自分たちの畑で確かめ、次の判断に生かしていきます。

畑が見えることも、農家直送の価値

スーパーで一本のきゅうりを手に取るとき、その前にどんな朝があり、誰がどんな判断をしたのかまでは見えにくいものです。農家直送のよさは、距離の近さだけではありません。育てた場所や作り手の考え方が見え、その背景ごと選べることにもあります。

河田農園では、畑の様子、収穫の時期、保存の工夫、旬の食べ方を農家のブログやSNSでお伝えしています。農園が歩んできた道は農園の歴史でもご覧いただけます。

今日も畑を見ます

土を触り、葉を見て、実を手に取る。何年作っていても、毎日同じ答えにはなりません。うまくいかなかったことは次の日に直し、よかったことも本当に続けてよいか確かめます。

私たちが届けたいのは、食べたときに張りとみずみずしさが分かるきゅうりです。そのために今日もハウスを歩き、一本ずつ見て送り出します。

参考にした公的資料

農林水産省「土づくり関連情報」
土づくりの考え方と、土壌の状態に応じた資材の適正施用について参照しました。

農林水産省「バイオ炭の施用量上限の目安について」
バイオ炭の定義、土壌への作用、施用時の留意点を参照しました。

農林水産省「環境制御技術について」
施設園芸における温度、土壌水分、日射量、湿度などの環境要因を参照しました。

群馬県「群馬県の野菜生産について」
群馬県産きゅうりの出荷量、作型、産地情報を参照しました。

※土壌改良資材の作用や作物の生育は、資材の種類、施用量、土壌条件、天候、栽培方法などによって異なります。本文は特定の効果を保証するものではありません。